中川裕貴による2009年~2012年の様々な表現のベストヒット記録。
<2012年>
① gnu / event
② 空間現代 / 空間現代2
③ Moe and Ghost / 幽霊たち
④ suzukiiii×youpy / sxy
⑤ Insect Taboo / SONGISM
⑥ Henry Flynt / Hillbilly Tape Music
⑦ Captain BeefHeart / lick my decals off
⑧ People in the box / Ave Materia
⑨ NRQ / のーまんずらんど
⑩ Peter Ivers / Take It Out on Me
→①今年の2月にz-z-言語「ウ」との共同企画にて、お呼びしました。これは最新版よりはひとつ前の作品。最新作knownsに比べるといくらか「音楽」「ジャズ」「ロック」的ではあるが、その各楽器・音・パーツ・歯車の重なりとずれ(多分全て意図されている)は本当に聴いていて、耳を引きました。多分に影響を受けた、これからも受けていく一枚。②セカンド出ましたね。こちらも去年イベントに呼ばせて頂いたバンド。その時にやっていて感銘を受けた曲が入っていました。ひとつひとつの音を別々に録音して・編集によって楽曲を立ち上げていったとどこかに記載がありましたが、その雰囲気は多分に感じます。CDなので演奏している体は見えないのですが、音像からその身体が良く見えるみたいな言説からもうひとつ飛んだところにある音像と楽曲。4曲目は本当に演奏できるのですか?フィジカルでわくわくする部分もありますが、全体を漂ういい意味での退屈さ。これはメンバーも愛聴しているらしいSNDなどのミニマルテクノにも感じる部分です。歌詞にもあるように「あたりまえにずれてしまったことから遠くにずれてしまった」いう言葉の妙。まさにその通りです。③女性のラップとトラックメーカーによるヒップホップ系の音楽。あんまりラップは聞きませんし、他の女性ラッパーは知りませんが、言葉に力があり、あとよくじゃべるしゃべる。けどいやみでは無いし、何もないわけではない。トラックも言葉との距離感がよい感じです。単純に恰好がよい。少し降神にちかいものを感じたのは気のせいか。④今年大阪で共演させて頂きました。suzukiiiiさんは昔からいろいろとお世話になっています。音源はなんとなくその共演した際に購入させて頂きましたが、非常によかったです。こういう音の素材で、こういう音のずれ方は聞いたことがある気もしますが、が、が、なんか聞いたことない感じがしました。全体を覆うラフな電子音の交錯。制作過程もかなりテキトーだったとお伺いしましたが、このバランスもお二人だから為せるものかと思いました。密かな名盤。⑤がははわしはこういうの好きやぞ~長野氏は実存がないと言ってましたが、まあ確かに。音楽を聴きながら素直を笑って吹いて考えるの3拍子揃ったある種珍しい珍版。一度ライブが見てみたい。ていうか②から⑤まで全部HEADZの作品・・・別に回し者ではありません。⑥何年か前から愛聴しているHenry Flyntの作品。これも結構聞いています。足をパタパタさせながらバイオリン、キーキー。あとはボヨーンとしたヒルビリー音楽。ブルース的な奏法の勉強になりました。今年はこの人を参考にした曲も作りました。⑦ビーフハートも良く聞きましたね今年は。個人的にはトラウトマスクよりこちら押しです。これとThis heatは何度聞いても唸ってしまいます。⑧ここ最近自分がずっとその動向を注目している唯一のメジャーバンドの最新作。やはり良かった。心憎かった。特に3曲目、感動的?な最後の曲、みんな春を売ったなる曲が特に良かった。自分はロきノン系とかJ-ROCKとか真面目というかまっすぐな心でもう聞けないのですが、彼らの曲や歌詞にはなんというか惹かれるものがある。ギターボーカルの人が、ケビンドラムとか阿部薫とか好きやからか?なんま関係ないやろう。アレンジが非常に参考になる。あとアルバムを通して、微妙に音をデジタル的に歪ませてたり、あえてスケール的に微妙な音を入れてみたりといろいろ遊び心を感じます。それでいてポップの一言。これまたギターぼーかるの人の「素材はこだわっても、聴く人には最終的にカレーを出したい」という言説に説得力があります。⑨二胡、ウッドベース、ギター、ドラムを基本としたカルテット。二胡があるからなんかオリエンタルな感じかと思うえば、あんまりそうではない。バンド名のNew Residential Quarters、新興住宅地の通りの新しい群れを成した音楽に聞こえます。風通りもよくて、ドライブで良く聞きました。二胡とギターのユニゾンは非常に面白かった。またまだどこかに残る音楽の可能性を感じましたとさ。⑩何年か前にジムオルークさんがどこかの年間レビューで今年はこのアルバムとsunn O)))(やっけか?)のアルバムしかよくなかったみたいなことを言ってました。遅ればせながら今年よく聞いた。再発ものなのかいな?ビーフハートに近い部分もあるのかないのか・・ただこちらももっとくねくねしているというかなんというか。結構衝撃でしたよええ、ええ。こういう名盤の怪盤は頻繁には聞けません。喰われてしまいそうで。
次点はのっぽのグーニー、Mono Fontanaなどか
素晴らしかった舞台:
1. 山川冬樹 @京都芸術センター
2. 壬生狂言 演目「土蜘蛛」ほか @壬生寺
3. gnu @UrBANGUILD
4. ポツドール 「夢の城」@立誠小学校
5. OORUTAICHI @高尾小学校
6. Contact Gonzo @AIホール
1:文句なしの今年一番のライブでした。エレキギター、骨伝導頭蓋骨マイク、ホーミー、シンバル。素材は知っていた。それぞれの感じも知っている。しかしその「知っている」のはるか彼方、先を行くその演奏と表現、インパクトにただただ茫然・感動。約2時間の驚きと至福。良いライブはいろいろありますが、この人と同じ時代に生きれて良かったと思うレベルのライブは、今回と何年か前に横浜トリエンナーレで観た、小杉武久氏の爆音ライブエレクトロニクスライブのみ。自分も音と身体を曲がりなりにもテーマにやっていますが、ここまでの完成度のものは初めてみました。励みになる。そしていつかあわよくばご一緒したい。
2: 何年か前にも観に行ってその時にも感銘を受けた。今年も観に行きました。いやあやっぱり素晴らしかった。壬生狂言の詳しいことは他で調べて頂きたいが、無言劇です。役者の動きや鳴り物をならす子供から大人、衣装、土蜘蛛が出す糸、裏方、ローファイな演出方法(悪役が出てくる時にふすまをガタガタ揺れるなど)などなどなんか純粋に見ていて楽しかった。長い長い時間をかけて繰り返される展開や構成にはただただ微笑むしかありませんでした。お客さんもみんな楽しんでいる。歓声、拍手が絶えない。毎年何回かやってますので是非観に行って頂きたいです。あとこれを見て、やはり良い所作には良い音や時間が宿ると思いました。
3: 2月にお呼びし、gnuに大阪・京都とライブをして頂きました。1日目は京都のUrBANGUILD。CDで知ってる編成ではなく(シンセの方が抜けられていた)、バイオリンが新たに追加されたバージョンでした。まさに圧巻にひとこと。キングクリムゾンみたいというお客さんもいましたが成程という感じ。こんなことがバンドで音楽でできるのかという展開の数々・・・あまり演奏に圧倒されることはないのですが、本当に文字通り圧倒されました。そして自分が共演するにはまだまだ時期尚早とも感じたのも正直な印象。ivyという長大な曲の途中のLRの2台のドラムによるドラムロールの音の動きががまるで嵐のようで、本当に何か自然現象を見ているかのようでした。
4: 話の筋はこちらへ⇒http://www.potudo-ru.com/past/past14.html
観劇して非常に驚いたというか感銘を受けたのは、その舞台の様々な要素のフラットさ。ギャルもギャル男もパワプロも、音楽も、生々しい性描写も自慰も、スローモーションも・・・こういうのを扱ったり、舞台に導入したりすると、大体そこにはなんというか強烈な意味やら記号みたいなものが 提出されるのですが(自分はそれでアピールしてくる輩はきらい)、この劇団はそのある意味で生まれる強烈突起物を、本当に平らに平らにならしていっているような気がしました。その作業の細密さと舞台上の静かなインパクトに感心した。関西ではあまりみられない、こういう(奥深い所で行われている)丁寧な作業にはやはり惹かれるものが多々ある。
5: 周りから聴いていましたが、文字通りの本当に素晴らしい才能・センスだと思いました。ワールドクラスの「踊れる」でした。
6:昔から何度か拝見させて頂き、一ファンであるコンタクトゴンゾ。今回は音だけの作品ということで、どんなもんやねんと観に行きましたが、非常の面白かった。西川文章さんによる16CH?のSPシステムの音の臨場感と定位の移動が本当すごかった。衝突の痛みすら感じとれるような精密な音像。暗転と明転。音の周りの身体(身体の周りの音)ではこういうことできるよなぁと正論(いい意味で)を見せられた感じ。こういったところに、またこういう切り口をスタートにした際、これに加えて楽器を持つという行為でいったい何ができるだろうか?もちろん「音楽」ができるが、本当にそれだけでいいのか?という問い。いい舞台表現の問でした。
<2011年>
閉店後のパチンコ屋のパチンコ台から流れる「扉が開いています」という呪文により、脳みその蓋が大解放。2011年の記憶は全てなくなりましたとさ。2012年にご期待ください。
※2010年-2011年頃は「サラリーマン」としてピークの状態であったためか、文章やセレクションやテンションに乱れがあります。お詫び申し上げます(2019年11月中川追記)
<2010年>
1 サンガツ "5つのコンポジション"
2 Deathspell Omega "Mass Grave Aesthetics"
3 Deathspell Omega "Chaining the katechon"
4 Stille Volk "Ex-uvies"
5 フジファブリック "クロニクル"
6 ZNR "Barricade 3"
7 AKB48 "ヘビーローテーション"
8 Radian "Chimetic"
9 People in the box "Family record"
10 Supersilent "11"
一言:
1、は別のコラムでも書いたようにサンガツのニューアルバム。チェルフィッチュやダンサーとの共演のせいなのか、身体性というか人間性というかよくわかりませんが、とにかく自由な形のポストロックになったなという印象。2、3昨年はブラックメタルが暑かった。フランス産ブラックメタルdeathspellは今年一番の発見です。2、は地獄絵巻のようにめぐるめく悪意を変わり変わり体験できます、3、は怒涛の展開で引きづりまわされます。どちらも20分前後で1曲。4、こちらもブラックメタル?mag for earのあいまいな音楽特集に載ってました。たしかふれ込みはブラックメタル版ガスター・デル・ソル。その通りかはわからないがとにかくよくわからない牧歌的な雰囲気とわかわからん展開、ときどきメタル、哀愁たっぷりパートなど、盛りだくさんの不必要バラエティパック。好きです。5、なんかはまりましたフジファブリック。3曲目のmonsterは個人的に秀抜な出来な気がします。他にもよい曲たくさん。後なんかよい録音です。歌詞もなんかすっとぼけたものや、自責の念が強いものが多く、不覚にも少し共感しました。6、わたくしはこういう何かがおかしい室内楽風のお遊びが大好きです。ZNRは他の作品も好きでなぜかたまに、ふと聴いてしまっています。7、これなしの今年の私は地上にいなかったでしょう。堕天使の黒い翼が生えそうなわたしをなりふり構わないラブソングで感動させてくれました。これのせいで闇に潜んでいたロリコン熱が大爆発。自分はもうただのくずです。8、Radianの新譜。みんなあんまり褒めないですが、良くなってませんか?ちょっとインダストリアルになった感じ、というか西洋の平面な絵画に肉感(マッス)がついたというか、切れ込みが入ったというか。ジャケットもヨーロッパ至上主義だった私には好感触。最後の曲のかっこよさはまさにRadian。9、別のコラムでも書きましたね。後半にめっちゃ聴きました。現在歌ものバンドで一番面白いかつ生産的(これ大事ね)なことをしているバンドだと思います。ライブ観たいな。10、"10"を別のコラムでプッシュしましたが、後で聴いた11が非常に素晴らしかった。しいていうなら"1-3"の荒っぽいノイズロックな感じに"8"辺りの抽象姓(便利な言葉つくったねえ)をまぜまぜコネコネした感じ。このさじ加減はベスト!LPのみの販売ですが、聴く価値あり。
次点は、Perfume"ねえ"(これ聴くと仕事の朝でも、それそっちのけでどこかに行きたくなって大好き!)、世界の終りのアルバム(終わってて大好き!)、別コラム参照のBurzumの監獄アルバム(魂が無くて大好き!)、TOM RECHICONのアルバム(自由だから大好き!)、DEATHSPELL PMEGAの他のアルバム(呪いが強すぎて大好き!)、z-z言語「ウ」のアルバム(もうなんか大好き!)、SNDの新しいの(タイトルがAtavismなんて大好き!)
<2009年>
①Luc Ferrari「L'Œuvre Électronique」
②Noel Akchonte「rien」
③jean-luc guionnet & Eric la casa「mansion,houseⅡⅤ」
④Supersilent「5」
⑤Hose「Ⅱ」
⑥相対性理論「ハイファイ親書」
⑦宇波、大蔵、杉本「chamber music concerts vol.1」
⑧Henry Flynt「graduation~」
⑨Janek schefer「alone at last」
⑩gnu「knowns」
→①は無論、一家に一箱。②は去年より繰り返し聴いている、エレクトリックにより作ることの出来る最高の景色、付属の森山大道によるの写真と音の関係も妙、彼は来年一月にフェラーリの曲をやりに同志社大にやってきます。③はサックスとマイク、フィールドレコーディング、図と地の欠落、大体環境音なんてのは楽器の後ろの添え物ですがこれは違う、背景が全て、前景が全て、録音芸術という括りはないがそう言ってよいくらい。④も去年より、フリージャズですが、いわゆるのとは違う、おぞましいほどに静かで楽器の質感を残しながら理想的な抽象具合、というか抽象って何よって具合、DVDが出てるけどライブも観たい。⑤⑥は個人的には大問題の盤。⑦は宇波さん、大蔵さん、杉本さんによる室内楽集、夜中に聴くのに最適、最近こういう音や思考が非常に興味深い、杉本さんがおっしゃるように"音の個性"なんていう余裕はないのです、自分への戒めのためにも非常に素晴らしい盤。⑧はフルクサスにも参加してるフリントによるブルース、今年は個人的になんかブルースが熱かった。⑨はミュージックコンクレート的なやつ、音選びと構成の感じが好きです、何より非常に気持ちよい。⑩前述の大蔵さんによるリーダーバンド。ポストロックみたいな編成だがポストロック好きは絶対に聴けない、用途/作動/停止動機不明の音楽、これには驚いた、こんなの他にはないような気がする。
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