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Diary|My Best Hits 2019

中川裕貴による2019年の様々なモノ/表現のベストヒット記録。

 

【CD/レコード/録音】

1. ELIANE RADIGUE / L'OEUVRE ELECTRONIQUE

2. Musica Elettronica Viva / leave the city

3. SANTERIA HAITIAN / Santeria Haitian

4. Toño Fuentes Y Su Guitarra Hawayana ‎/Fantasia En Cuerdas Que Lloran

5. L’Arc~en~Ciel / DUNE 10th Anniversary Edition

6. FLYING LOTUS / Flamagra

7. Quinteto Real(S/T)

8. ENNIO MORRICONE / Crime & Dissonance

9. O.S.T (ENNIO MORRICONE)/IL SORRISO DEL GRANDE TENTATORE

10. O.S.T(GIL MELLE) / The Andromeda Strain


→今年の前半はドローン/民族、コミューン的な音楽にどっぷりでした。1はフランスの女性電子音楽家の14枚ボックスセット。チベット+電子音楽という触れ込みがありましたが、とても良かったです(夏場に良く聞いて、聞きながら意識を飛ばしていました)。


2はたしか大学生のときにネットオークションで落札してそのときは全然ピンとこなかったですが、ある程度精神的に枯れた今聴くと、とてもしっくりきました。これはドローンではないですが、彼方の民族音楽というか、最高のジャケットのようにどこかにもっていかれる感じ(leave the city)です。A面が特に好き。


3はアフリカ起源の民族宗教とキリスト教が習合して生まれたキューバのアフロ・アメリカン民族宗教「サンテリア」を収録した音源。これも大分前にLos Apsonで買って、そのときは「ふ~ん」で感じ聞き流してしまっていましたが、今聴くとそのリズムや声のやりとりがとても素晴らしく(当時は何を聴いていたのか…)、いろいろと影響をうけました。1~3は所謂スピリチュアルなブツです。


4は何年か前のベストにもあげたコロンビアのスチールギター奏者トーニョ・フエンテスの作品。10000tレコードに500円で売られてて思わず声が出た。今回のは流ちょうな伴奏の上でカラオケみたいな感じの音量(伴奏をかき消すくらい)でスチールギターが炸裂しています。安易に使いたくない言葉ですが、本当に「魂」のギターで泣けます。「私苦しくてもここで生きてます」とギターが言っているよう。私もこんな感じの演奏というかサウンドをいつかは出してみたいと思っている。https://www.discogs.com/To%C3%B1o-Fuentes-Y-Su-Guitarra-Hawayana-Fantasia-En-Cuerdas-Que-Lloran/release/12928181


5、ひとのラルクを笑うな。2004年に出たインディーズの頃の音源リマスター+過去の貴重音源がプラスされた特別版です。いろんな要素が雑然としており、どこに向かうかわからない感じがなんというか原石感があります。売れた後とは違うぺけぺけでさして動かない普通なベース、曲によっては空中分解寸前のギター、もつれるドラムのフィル、割れるグラスの音(本当に曲に入ってる)、なんかフラメンコ調、ビジュアル系(ラルクでは禁句)マナーのウィスパーなどなど、ラルク「未満」がふんだんに盛り込まれている盤です(全部褒めてる。あと各方面から怒られそうだけどなんとなく昆虫キッズに似てると思います。誰か分析してくれ)。ラルク、ストリーミング解禁されたみたいですね。


6はフライングロータスの新譜。前作より個人的には好きです。前のはジャケットよろしく曼荼羅/絵巻物的な感じでしたが、今回のは1つ1つが楽曲然としているのと、なんだか当人が「曲をつくること」に楽しさを再び見出した感じがして(勝手に推測)、聴いていてよかった。


7はアルゼンチンタンゴ。円盤田口さんからライブのギャラとして頂きました(感謝)。これが田口さんが最初にアルゼンチンタンゴで衝撃を受けた盤だそうですが、たしかにこれは本当にすごくて、回転数間違えてるのかってくらいに何かが「速い」。というかこのようなスピード感でユニゾン及び、同期しかつ緩急があるのが信じられない演奏(多分それが回転数の誤認識に繋がっているはず)。レコードはレアだがCDはAmazonにもありそうなので是非聴いてください。


8~10、今年は後半になって突然映画音楽に覚醒しました。8,9はモリコーネです。

8はFaith no moreのマイクパットンが監修したモリコーネの狂った側面ばかりを集めた2枚組のCD。とりあえずこれとか如何?(https://www.youtube.com/watch?v=adflrkClQXk)。


9は映画「IL SORRISO DEL GRANDE TENTATORE" (1974)/英題THE DEVIL IS A WOMAN」のサントラらしいです。合唱を中心に構成された曲が多く、それぞれがほんとうに素晴らしかった。これもYOUTUBEにある。


10は山田光さんがtwitterでシェアしてた情報から情報を得て、聴いて、そのままレコ屋で買いました。「 The Andromeda Strain」という映画のサントラです。今年はソロ公演のタイトルにはなってた「アブストラクト」ということをいろいろ意識しましたが、これは音楽的にもその最良のひとつだと思います。ちなみに8~10はサントラですが、いずれもまだ映画はみていません…。


 

【舞台/ライブ/映画/展示/競馬/行事】

喫茶大宮(丹波橋)|場所

3/16 ジョンのサン@難波ベアーズ|ライブ

クリントイーストウッド「運び屋」|映画

4/20 とうめいロボ@ゆすらご|ライブ

4/26 唐組「ジャガーの涙」@南天満公園|演劇

5/16 山本精一@UrBANGUILD|ライブ

5/23 岡崎乾二郎@京都精華大学|トーク

6/23 ブラジル@塩屋グッゲンハイム|ライブ

7/4 吉増剛造@同志社|映画(言葉、響き、イメージ ~「音から作る映画」からシネマの再創造へ)

7/20 国言詢音頭(大川の段/五人伐の段)@国立文楽劇場|文楽

いのりの世界のどうぶつえん@奈良国立博物館|展覧会

9/15 犬飼勝哉 ノーマル@三鷹市芸術文化センター星のホール|演劇

10/18 ウィリアム・ケントリッジ『冬の旅』@春秋座|音楽/パフォーマンス

タルベーラ「サタンタンゴ」@出町座|映画

ソクーロフ「チェチェンへ アレクサンドラの旅」@みなみ会館|映画

11/10 エリザベス女王杯@京都競馬場|競馬

11/19 吉増剛造「Mademoiselle Kinkaへ」@同志社|映画+パフォーマンス

12/14-15 GEIST@YCAM|音楽、パフォーマンス

フレデリック・ワイズマン「適応と仕事」@みなみ会館|映画

フレデリック・ワイズマン「チチカット・フォーリーズ」@みなみ会館|映画


→昨年消滅を嘆いた喫茶店「ニュー雲仙」の代わり、彗星のように、いや単純に見落としていただけですが近所に良い喫茶店を見つけました。私は大きめの空間で自分の存在が希薄になる系の、そしてどこか狂っている喫茶店が好みなのですが、こちらはほぼ完ぺきです。最初みつけたときは「しばらく休みます」の張り紙が貼ってあり、私はこれは閉店の隠語だと思っていたのですが(しかし手書きの筆跡の感じからはそうでないことも片や願っていました)、数か月後に復活していることを確認、無事に入れました。ここの何が良いのか?自動ドアに取っ手がついていて自分で開ける式(後に自動ドアは修理されてました)、カメのはく製や仮面、海外ものっぽい調度品らしいものが壁にかけられている様、各テーブルにマッチ箱の複数がセロテープでまとめられ置かれている様(この知恵には感動した。私もこういうことが表現でしたい)、サンドイッチに味の素がそっとつくところ、出されたスープについて、後から店主が「それただのお湯と違ったか?」と取り換えにきてくれるところ、2階はもともとビリヤード場だったこと(そのときのことを勝手に想像)などなど。店の中も外も人もモノも、それらが無意識的に現代の「サービス」に徹底的に交戦する様を勝手に感じ、なぜか励まされています。喫茶大宮。googleではあまり情報でないので、気になる人は訊いてください。平日朝~16時、土曜は朝から13時くらいまでと難易度高いですが是非。


1月、2月は烏丸ストロークロックの公演「祝・祝日」及び、自分の公演@京都芸術センターのことでほとんど何も観れてなかった(関係者各位、またご来場いただいた方、ありがとうございました)。


3月、ジョンのサンはサポートした滝沢朋恵さんのレコ発での対バンでしたが、あぜんとするくらい良かった。まだまだ自由に飄々と凄いことをやっているひとがいるのだなと思いました。イーストウッド「運び屋」は88歳恐るべしというか、大変良くできていて普通に感動して帰りました。たまにはその人をみて自分も長生きしたいな思うような先人に会いにいくことが大事だなと最近思います。


4月、数年ぶりのとうめいロボさんのライブ、歳月を経て、自分もとうめいロボさんも変わったところがあったかもしれないが伝わってくるものが全く変わっていないことに感動したとともに、その歌の刃の鋭さが全く変わっていないことは途轍もないことだと思いました。また関西でもライブをやってほしい。唐組は初めてみたけれど、所謂自分のしってる現代演劇とは違って、のっけからテンション100%な感じが良かったです。音響のオペレーションとかも俳優さんが代わる代わるやってたり、そういうところも良かったです。こういう「集団」の演劇もあるのだなと思った。


5月山本精一さんと達久さん、須藤さんの精一さんうたものライブは素晴らしいバンドサウンドでした。岡崎乾二郎さんのトークは「抽象」ということについて、いくつもの示唆を頂いたトークでした(また本人がもう今はさほどこのこと=抽象に興味がなさそうなところも逆に良かったです。過ぎたことより未来をみている感じが)。


6月、おそらくはじめてのブラジルはHOSEのレコ発にて。HOSEも良かったのですが(生「富永愛!」のコールも聴けたしね)ブラジルが圧巻でした。なんというかとんでもない場所(例えば断崖絶壁とか)で全く力の入っていないさまを見せられた感じでした。たくましいバンドは美しい。


7月、吉増さんは11月もありましたが、ここでは萩原朔太郎についての映画?を。何度も朔太郎さんに呼びかけるその声が本当に素晴らしかった。また映像表現としても大変優れたものでした。

そして今年はようやく文楽デビュー。全体的にとても良かったのですが、特に五人伐の段のラストシーン。大坂曾根崎新地の湯女(ゆな)菊野らが薩摩侍に殺された5人斬りシーンからの舞台転換、そして侍が足や刀の血をふき、降り注ぐ雨(本水といって本物の水が上から降ってた)、どこかからきこえる鐘の音、太鼓、義太夫、そして「諸行無常~」の声が入る光景。大変素晴らしかった。殺人鬼が諸行無常ということ(いえてしまえること)、その他さまざまなものが混在、同居する時間(鐘の音と関係のない太鼓に音)が人形を通じて立ち上がってくること、またその傍らに人がいること(人形遣い、黒子、義太夫)。しかしそれは人形=モノの話であること。混在することの素晴らしさをみました。これからも都度文楽はみたいです。

いのりの世界のどうぶつえん@奈良国立博物館もこの博物館にしてはライトな内容(子供向けの展覧会だったかと)ながら、見所多くて楽しみました。私は奈良国立博物館を高く評価しています。


9月東京ツアーと併せてみれた 犬飼勝哉 ノーマルもとても良かったです。犬飼氏とは古い付き合いですが、作品はどんどん良くなっており、また今回は偉そうに言いますが、本が書ききれている感じがあってよかったです。同じく古い友人で俳優の浅井くんも演技も大変良かったです。


10月ウィリアムケントリッジは、良くなかったひともいるかと思いますが、僕にとってはマスターのヒトなのでどうしても良くみえてしまう。最近人外のことやモノの時間や人間以後の話が盛り上がってるように思うけれど、ヒトが何かを作りそれがイメージを持つという意味ではケントリッジがやっている以上もことはなかなかないのではないかと思った。ある意味ではこういうことを目指して自分も演奏しているのだと強く励まされた。そこにはちゃんと手と頭があったということです。 タルベーラ「サタンタンゴ」はオールナイトで。3幕で一部寝落ちしましたが、起きても同じトーンでした。個人的には2幕の酒場のシーンが死ぬほどに好きです。ソクーロフ「チェチェンへ」も素晴らしかった。まず各カットが良い。軍人が孫になるとき、また職務に戻るとき、そのカット、顔、振る舞い。日本の老女の言葉の引用「大切なのは理性(武器や権力ではなく)」。説教、女や家族について、そして孫の武器の手入れ、兵器の扱いと説明と理解と無理解、話の頓挫、現地人との別れ、4人の女性の抱擁が美しい。また現地人の一人が去り行く電車のアレクサンドロではなく、去り行く電車の反対側を向くこと。行く先ではなく、これからやってくるものに眼差しを向けること(去り行くものを目で追わないこと)。それらのことが印象に残っています。


11月、エリザベス女王杯。競馬は今年も何回かいきましたが概ね成績は低調でした。この日は当てれた。おめでとうラッキーライラック。吉増剛造「Mademoiselle Kinkaへ」、映画はもとより、それに交わる吉増さんのトークが本当にすごかった。ずっといろんなものに触って、それに感じ入ることを続けなければならないと思いました。


12月、自分も出演したGEIST、ずっとヒトから見えないところで演奏してましたし、全体像は全く把握できてませんが、それでもすごいものになっていたと思います。日野さんの才能/力量が伺いしれた大作でした。GEISTはまたどこかであるはずです。そして最後はフレデリック・ワイズマン@みなみ会館。特に「チチカット・フォーリーズ」がほんとうにすごかった。最後の戦いの痕跡も含めて。ドキュメンタリーの神髄というか(私はドキュメンタリーが何なのか多分分かってませんが)、真実について考える、語ることの最良のものを観た気がしました。

 

【書籍など】

平倉 圭/かたちは思考する: 芸術制作の分析

モリス・バーマン, 柴田 元幸訳/デカルトからベイトソンへ――世界の再魔術化

諸星 大二郎/不安の立像

諸星 大二郎/夢見る機械

ロラン バルト/表徴の帝国

夏目 漱石/草枕

岡崎 乾二郎/抽象の力 (近代芸術の解析)

上妻 世海/制作へ 上妻世海初期論考集

マルティン・ハイデガー/技術とは何だろうか 三つの講演 


→平倉さんの本は初めて読みましたが、本当に面白く、表紙のように、何らかの力に巻き込まれるような芸術について、氏の文章からいろいろと影響を受けています(もう1周せねば)。「デカルトからベイトソンへ――世界の再魔術化」はめちゃくちゃ良い本でした。世界を把握するために人間がしてきたことの歴史がかなり詳細に書かれています。「人の心が、「科学的」(=主体客体分裂的)に再編されていく過程で色あせていった、隠喩的で、演劇的で、肉感的で、世界と一体化した知を取り戻そう──それが本書の熱い呼びかけだ。」。諸星さんには春以降で突然覚醒しましたが、とりあえずこの2つの中の短編がいろいろと最高でした。ロラン・バルト「表徴の帝国」(上の仏像はこの本の表紙です)はバルトを通してみた日本についてのエッセイという趣ですが、今読むのにすごく良いものだと思いました。この本の影響で文楽や俳句への興味が湧いたほど、素晴らしい視点からの日本について。岡崎乾二郎さんの抽象の力は表現において大変に影響を受けました。折に触れて読みかえすでしょう。またその抽象の力にも書いてあった草枕も良かった。基本、小説、特に近代?のものはあまり読まないのですが、読んでみたところ大変楽しめました。ラストの電車のシーンは感動した。上妻世海さんの著作は年初めに読んでましたが、制作論或いは分身論?としても非常に素晴らしい。これもまた読み返さねば。あとその流れではないのですが、ハイデガーの技術についての本も。これは最近読み終えたのですが、個人的には非常に実りあるものでした。得たものがあるので自分の表現の中に投影していきたい。「技術とは何だろうか、と問うことは、顕現と秘匿が、つまり真理が本質を発揮しているところが、出来事としておのずと本有化される、当のめぐり合わせの布置とは何だろうか、と問うことなのです。・・・ かつてテクネーという名称をおびていたのは、技術だけではありませんでした。かつては、輝き現われるものの輝きへと真理をもたらす、かの産み出して顕現させることも、テクネーと呼ばれていました。  かつては、真なるものを美しいものへもたらす産み出すはたらきも、テクネーと呼ばれていました。芸術というポイエーシスも、テクネーと呼ばれていたのです(本文より)。」


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