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Diary|My Best Hits 2023



2023年に、個人的に観た、聴いたものの中で良かったものを挙げていきます。


▼Sound(LP,CD etc):

1. Toshi Ichiyanagi / Maki Ishii - Music For Living Process / Cho-Etsu(Edition RZ)

2. Valentina Goncharova - Recordings 1987-1991, Vol. 1(SHUKAI)

3. Ragnar Johnson & Jessica Mayer - Sacred Flute Music From New Guinea: Madang / Windim Mabu(IDEOLOGIC ORGAN)

4. Voices Of The Rainforest: A Day In The Life Of The Kaluli People

5. Zabelle Panosian - I Am Servant of Your Voice: March 1917 - June 1918 (CANARY RECORDS)

6. Jon Collin & Demdike Stare - Minerals(DDS)

7. Ben Vida, Yarn/Wire & Nina Dante - The Beat My Head Hit(Shelter Press)

8. K.R.T. Wasitodiningrat – Java: Javanese Court Gamelan(Elektra Nonesuch)

9. MARGINAL CONSORT - 06 06 16 (ST. ELISABETH KIRCHE, BERLIN)(901 Editions)

10. Various - The Complete Obscure Records Collection 1975-1978(DIALOGO)

11. Harley Gaber - The Winds Rise In The North(Edition RZ)

12. Eva-Maria Houben - Ordinary Affects "Ensemble Works"(Edition Wandelweiser Records)

13. Morton Feldman, Peter Rundel,Pellegrini Quartet – Violin & String Quartet(hat[now]ART)


<コメント>

順不同。1は一柳先生の「Music For Living Process」が圧巻。個人的な今年聴いたものの中で一番の衝撃。まさにEdition RZの仕事という感じで、よく作品レビューのコメントとして挙がる「激渋」ということばがここまで似合う演奏も早々無い。鬼気迫る緊迫感。録音もめちゃくちゃカッコ良い(としか言えない)。Youtubeにも無さそうなので、是非LPで。

2はウクライナのレーベルSHUKAIのリリースで、ウクライナ・キエフ出身の女性音楽家「Valentina Goncharova」の1987年から91年に残された音源を収録。作家の紹介プロフィールには「80年代にはシュトックハウゼンやクセナキス、ガネリン・トリオから影響を受け、電子音楽とアコースティックの融合を実践し続けてきた異能の作家」とありますが、前述の現代音楽の作曲家のような堅苦しさよりも、さらに奥まったところに存在するより自由で捉えどころのない、その字面としての「闇」の音。異能という言葉にも違わない、個人的に本当に共感する音像でした。

3,4は昨年から個人的な一番注目している国、パプアニューギニア関連の音楽。3は笛と打楽器を主体とした、パプアニューギニアの奥地で収録された音の数々。これもパプアニューギニアの音楽に多いと思っている、どのような意図でそれぞれがしているか皆目わからない、また「音楽」という形式に当てはまるかもわからないような時間が流れています。音楽嫌いの方にもお勧めしたい。個人的には聴いてると笑顔になります。4はパプアニューギニアの大パプア高原の熱帯雨林に住む先住民(カルリ族)が生活する「環境」を録音したフィールドレコーディング。これはある本で読んだのですが、カルリ族がもつ「音を重ね合わせる」という独特の概念について、その一端がこの録音を聴くとわかります。様々な環境音や人の生活音、声、その他の生き物の存在など、それらが共に感応、もたれあいながら存在しているような様子。音とどのように共にいるか、それを考えるための素晴らしい教材。

5はEL SUR RECORDSで全く何も知らずに手に取り、視聴してとても良かったアルメニア人女性歌手の音源。録音の時代もあるとは思いますが、その「声」にとても魅了されました。まるである意味では何らかの「管」のような声。そして声やその演奏が、あるゾーンへと「行ききらない(表現へと発散されない)」、その絶妙な熱量が、アルメニアの歴史やこの歌手の人生(アルメニアの大虐殺を逃れるようにアメリカに渡り録音、その後も祖国の支援のために尽力した)やアルバムタイトルも含めて、静かにしかし強く響きます。こういうゴスペルが聴きたかった。作品についてはここに詳しい情報があります。


6は近年、活動が気になっていたDemdike Stare。田舎で窓を開けて聴くのには最適な極上のフォーク&コラージュ作品という感じ。これをかけると外の鳥がめっちゃ鳴く気がするのは気のせいでしょうか。

7も「声」の作品と言ってよいと思いますが、こちらは西洋から「お経」のようなものに焦点を当てて逆照射したような感触。様々な概念や音楽の着色を削っていった先に残ったある意味では「美」「人」のようなものに関係する何かを取り扱った作品と勝手に解釈。

8は今年の頭によく聴いていたジャワ島のガムラン。それなりにガムランも聴きましたが、個人的に一番脳が溶けるのは現時点ではこの音源。

9は何故かこれまでスルーしてしまっていたMARGINAL CONSORTのライブ盤。即興でありながら、いやそうで在るからゆえのMARGINAL CONSORTとしか言えない、独特の音とそれぞれの演奏の距離感。私もそれなりに即興をやってきましたが、聴いたことのないような集団アンサンブルで、どこか励まされるような一面も。今年はポーランドUnsoundでご一緒したのにスケジュールの都合で観れず大変残念でした。

10は滑り込みのBrian Eno監修のobscureボックス。今ずっと聴き進めていますが、どの音源がというよりかは、このOBSCURE(曖昧な/漠然とした)という概念を音にしたようなこれらの試みをひとまとめにしてくれたDIALOGOの仕事に感謝。個人的には再発モノの中ではEnnio Morricone&Bruno Nicolaiの「DIMENSIONI SONORE」と双璧を成す、生涯にわたって聴きたい作品です。


11はずっと知ってはいたけれど聴いてこなかった作品をようやく。影響を受けざるを得ない、メリメリ、ゴリゴリと軋み、そして枯れた弦楽四重奏。現代音楽にありがちな音の構成が冗長にならず、その弦楽の音の「強度」の持続がある程度の尺で切り上げられるのが良い(そしてまた別の同じような強度が次もやってくる)。

12はWandelweiser楽派なのか?なEva-Maria Houbenという人のドローン/アンサンブル作品。今年リリースされプッシュされているKali Maloneの3枚組よりも私はこっちの方が録音に気配のようなものが含まれているという点でも好み。

13は昨年からずっと聴き続けて、集め続けているフェルドマン。今年は高橋智子さんによるフェルドマンの本と併せてフェルドマンを聴いたり考えたりしましたが、音源としてはある意味で一番聴きやすいこちらを。ほとんでアンビエントとのような質感です。というかこれがかなり原理的な意味での「アンビエント」でないかとさえ感じるような弦楽アンサンブル。


あとここには挙げていませんが、Mark Fell, Rian Treanor, KakuhanのスプリットCD(Promo)も手前味噌ながら良く聴きました。マークが特に素晴らしいです。

(上記商品meditationsで売り切れてしまっていますが、年明け追加納品できたらと思っています)





▼Book:

川田 順造 - 聲

星野 太 - 食客論

郡司ペギオ幸夫 - 創造性はどこからやってくるか ――天然表現の世界

高橋智子 - モートン・フェルドマン (水声文庫)

仲谷 正史 - 脳がゾクゾクする不思議: ASMRを科学する


▼Movie:

三宅唱 - ケイコ 目を澄ませて

今敏 - Perfect Blue

宮崎駿 - 君たちはどう生きるか

ウルリケ・オッティンガー - アル中女の肖像

アレクサンドル・ソクーロフ - 太陽



▼Event/Performance/Exhibition

2/4 Tomomi Adachi at Club Metro

4/9 Thomas Ankersmit at Rewire

7/16 PHEW at RURAL2023

8/25 滝沢朋恵 at 外

9/1 goat at ロームシアター京都

9/9 高畑勲展 at 三重県総合博物館

9/22 Audio Base Camp 2@YCAM|DAY1:宇都宮泰(トクサノカンダカラ)、1729(DJ)

9/30 Mark Fell at UrBANGUILD

11/11 長野雅貴×KAZUTO YOKOKURA at enviroment 0g

12/8 CS+Kreme at Club Daphnia

12/23 ASUNA at 京セラ美術館





<2023年振り返り>

上記イベント併せて個人活動も振り返ります。

今年は諸々の活動は2月から、地味に初めてのMetroでの演奏からスタート。足立智美さんの強烈な演奏が記憶に残つています。また京都・外でのパフォーマンスではステートメントをもとに新しいソロのかたちを模索しました。3月は何といってもドラマーの芳垣さんにお誘い頂き、UrBANGUILDでのセッションを。山本精一さんや芳垣さん、UCONさんとの共演はステージの豪華さに学生自体の自分に知らせてあげたいものでした。


4月はなんといってもヨーロッパ、オランダはハーグとフランスはパリ。オランダはRewireというフェスティバルで、KAKUHANとKAKUHAN+Peter Zummo(アーサーラッセルの長きに亘るコラボレーターであるトロンボーン、鍵盤奏者)というスペシャルユニットもありました。本当に初めての海外で、またPeter Zummoとの共演など、振り返ると怒涛の日々でしたが、本当に素晴らしい日々でしたPeter Zummoとのコラボレーションは来年何かしらのかたちで発表があると思います。またRewireで拝見したThomas Ankersmitは素晴らしかったし、日本では考えられないほど沢山の観客がいたのも印象的でした。その後は続けてパリへ。パリ日本文化会館の皆様には大変お世話になり、パリのど真ん中で困ることなく楽しく過ごす。またコロナ対策の終末期?でいろいろと帰国前後の面倒なことが多かったですが、そちらもサポート頂きました。諸々、個人的には最高に恵まれた海外ツアーデビューでした。5月は神戸で、久田舜一郎さん(大倉流能小鼓)、角正之さん(動態ダンス)との共演が。特に久田先生との共演は自分にはほとんど自分がまだ何もしていないではとさえ感じるほどに貴重な経験でした。先の芳垣さんもそうなのですが、諸先輩方と共演できることを糧にしたいと思います。6月はMark Solborgやカブサッキ、また山本精一さんとの共演。山本精一さんの型破りっぷりに自分はどのようにしていくか考える。


7月はKAKUHANで苗場でのフェスRURALに出演。ここは何とってもPHEWさんでした。今年のベストアクト。最近は「圧倒的」という言葉に非常に懐疑的かつ警戒していますが(今、何かを「芸術」のようなもので圧倒することに一体、どのように/どこまで意味があるのか)、PHEWさんのこのパフォーマンスに関してはこの言葉を使わせてほしい。また7月は中川裕貴 x genseiichi At UrBANGUILDでした。イベントglycogen vol.1に出演。genくんとのDUOは年明けにもあります。8月はこっそり中川バンドのライブをして、そのあとは外で滝沢朋恵さんとの共演を。4,5年ぶりの滝沢さんのライブ自体が貴重だったのは勿論、個人的に滝沢さんのコアだと感じている目の前にいる存在、演奏、声がある意味で霧化しているような、どこかダブって視える、きこえるような感覚がパフォーマンスに今もあり、またそれを今も自分が感知できることが感慨深かったです。そして8月末はgoat10周年イベントでKAKUHANを。久しぶりのロームシアター京都サウスホールで私は大変愉しかったです。共演も本当に豪華でした。完全に仕上がったgoatが見れてそれも良い思い出。9月はAudio Base Camp 2@YCAM。宇都宮泰(トクサノカンダカラ)から1729のDJの流れが最高でした。宇都宮先生のトークは、音に空間と時間が必要であるという当たり前であり、しかしそこが肝であるということを、また音に響きがあり、それは空間に拡がっていくということを、まさに現場で音を交えてプレゼンテーションされていて、本当にスリリングだし、これからも音に関わりたいというモチベーションが再度芽生えました。そしてその後の威力さん=1729のDJは自分にとって「声」を感じる、他のDJからは感じることのない音像が目の前に現れていて、本当に素晴らしかったです。9月末はMark fell, Rian TreanorとKAKUHANのツアーを。特にMark fellのUrBANGUILDでのライブが個人的には全ツアーの中で最高のものでした。


10月はまたまたヨーロッパツアー。ドイツ(ハイデルベルク)→ポーランド(クラクフ)→ドイツ(ベルリン)と周りました。最初のEnjoy Jazz Festivalではシカゴからのジャズマンたちのジャズ演奏にほわーとなりながら(めっちゃ良かったです)、なんといってもポーランドUnsoundフェスティバルの素晴らしさを身をもって体感。おこがましい意見かもですが、オーディエンスの集中力、熱量の強さをひしひしと感じました(ライブ後も、また翌日以降の他の会場でも声をかけてくれる人が何人もいて凄く嬉しかったです)。またKAKUHAN featuring Adam Gołębiewskiも非常に良いコラボレーションができました。こちらも成果が日の目を見ることを期待しています。その後はベルリンでTujiko Norikoさんとも共演。今回のポーランドでもドイツでも色んな方に会えてお世話になりました。そして帰国後は早速東京2DAYS。芳垣さん企画で高良さん、潮田さんと。そして次の日には初のWWWでMark FellとKAKUHANでした。帰国後の時差ボケの中でみたMarkは人体の危険を感じるレベルの音圧でした。10月はその後に帰京して、ロームシアター京都の屋外で山月記を。京都の屋外での初めての山月記でしたが、意外と場にもマッチしていた気がします。その後は九大でMark,RianとKAKUHANでの演奏。ここではなんと4人での2時間近い演奏を。詳細はレビューをよろすずさんが書いてくれています。https://note.com/yorosz/n/na27b38ca326b?sub_rt=share_pb

また10月は写真家であり、吃音をお持ちの横山大介さんの展覧会のサポート(吃音リズムの譜面化作業とトーク&パフォーマンスで出演)も忘れ難い活動になりました。吃音という現象についての横山大介さんのとの共同作業はこれからもなにかしらあるかもしれません。


11月は大阪でかつてのバンドメンバーであり友人の長野くん企画へ。最前列でみた長野くんの演奏が以前より良くなっていて(理由は割愛しますが、音と音の選択がなんかソリッドになっていた)、また前から脈々とある意味不明さは健在。わたしを含めた多くのミュージシャンは見習うべき内容でした。最初から「地図」を持って表現をすることのつまらなさを、そして音が「何なのかわからない」部分を持ち舞台に上がることの重要さを身をもって照らしたような良いパフォーマンスでした。そして11月はまたまた盛岡で山月記を。盛岡という場所がとても良く、堪能、またここに来れたらと思いました。12月はKAKUHANでCS+Kremeをお迎えして。今回彼らのアテンドなども少しやらせてもらって良い経験になりました。また彼らのライブもとても素晴らしく、非常に共鳴する部分が沢山ありました。また共演できたらと強く思います。あとは直近ですが、ASUNAさんの100keyboardsを久しぶりに。前に見たのはたしか高円寺の円盤(現・黒猫)だったと思いますが、ライブ後のトークでもASUNAさんも言われていたように会場の京セラ美術館の深い残響によってかなり別物の作品となっていました。が、これはこれで大変すばらしく、いくつもの声の重なりが聴こえ、場所もあいまって、ある意味では宗教行事的な趣さえもありました。そして昨日はUrBANGUILDで餅つき音楽をやってフィニッシュ。最後の餅つきBORELOはある意味では悪い夢のような一幕(ボレロと餅つきが共存している)でしたが、これぞアバンギルドという感じで素敵な締めとなりました。


・・・


以上です。


健康に充実したかたちで今年の活動を終えることができそうです。

何より初めての海外はいろいろと貴重な経験と自分に何ができて、何が足りていないかと考える機会となりました。今、国内外で起きていることをいくつもの地点から、様々な距離感、視点で眺めること。海外に行けたことはそういったことに対しても重要な意味をもったように思います。音だけではなく物理的に他者やこの国のかたちを知っていくこと、何かしら自分も少しずつ変わっていくことをこれからも実行していきます。


そして来年の大きな目標はまずはただ一つ。「ソロアルバム」を作ることです。

ここ数年で変わった自分の演奏をいい加減、まとめておきます。またライブも各地でボチボチとやっていくと思います。新しい試みやプロジェクトも進んでいく予定です。


言い足りないことはありますが、一旦はこのようなかたちでこの年の振り返りを駆け抜けておきます。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。



中川 裕貴

※写真は今メインで住んでいる場所(三重)の四季の模様です。



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